1−4 投資と投機

投資と投機の違い。
一般に意図される意味を批判的に検討し、そこから明確な概念を具体的に示す。


投資と投機の一般的な違い

投資               投機
1、債権               株式
2、現物買い            信用買い
3、長期保有            回転売買
4、インカムゲインが目的     キャピタルゲインが目的
5、安全な証券           リスクの大きい株式

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1、債権と株式
投資に属するものは債権だけと考えると牛飼いの権威者もいるが、債権を全面的に信頼できる投資適格証券と妄信するのはきわめて危険。保証の薄い債権の購入は投機的。
株だって、キャピタルゲインを生む可能性があるからといって、強力な経営の企業の株を投資のカテゴリから除外するのは問題。


2〜3、現物買いと信用買い/長期保有と回転売買
投資と投機の違いというよりは「購入方法」と「やり方」に関するもの。
購入資金を誰も出してくれないような、もっとも投機的な株式であるペニーストック(投機的な低位株)は現物で買わなければならないし、それとは対照的に戦時中、国民はアメリカ国債を借入金で購入するように求められた。購入方法から、前者が投機、後者が投資であると言い切ることはできない。

同じように、長期保有と回転売買の定義も大雑把に区別する必要がある。
塩漬け株としてやむなく「長期の投機」を行っていることは珍しいことではないし、それなりの目的があって「短気の投資」が行われていることもよくある。


4〜5、インカムゲインキャピタルゲイン/安全な証券とリスクの多い株式
昔の長期投資では、一般投資家の関心は元本の安全性とインカムゲインに向けられていた。しかし最近では、元本の値上がり益、キャピタルゲインが投資家の最大の目的、関心事となった。
結果、投資と投機ははっきりと区別がつかなくなってしまった。ここで改めて、あたらいい時代の投資理論と言うものを考える。
回答の一つは、安全性とリスクに関する定義を検討することで得られるだろう。


*安全性の基準
安全性の概念は、それが証券購入者の思いや心理よりももっと具体的なものに野とづいている場合に限って明確なものとなるだろう。
十分に確立された基準に従って資金を投じると言う価値判断がないのはギャンブル的。市場は(それがどれほど高い水準であろうとも)現在の価格を次々と織り込み、それを唯一の価値として刻々と新しい基準を更新していく、といったダイナミックな動きに基づく安全性の考えなどは明らかに錯覚であり、危険に満ちている。
極端に言えば、いい株に高すぎる値段は存在せず、たとえ25ドルから200ドルに高騰しても依然として「安全である」ということになってしまう。


提案する投資の定義
投資と安全性を同一視するのは適切ではなく、安全性とは明確な基準に基づいて決定しなければならない。
おなじように、投資家はその関心の対象を現在の利益と言うものだけに限定せず、時には将来のリターンを見込んで証券を購入し、ある程度の期間を待つという心構えも必要である。
こうした考えを念頭に置きながら、以下の定義を提案する。すなわち、
「投資とは詳細な分析に基づいて、元本の安全性と満足すべきリターンを確保する行為である。この原則を満たさないものを投機と呼ぶ」
この定義のうち、いくつかの言葉の意味をさらに詳しく検討する必要がある。
投資……単に特定の証券を購入する事を投資と呼ぶのではない。裁定取引やヘッジも投資行為に含まれる。高い安全性を確保できるこうした投資手法は通常の投資の概念からは少しはみ出すが、理にかなっている。
詳細な分析……十分に確立された安全性の基準に照らして様々な事実を検討することを意味する。
安全性……絶対的または完全なものではない。平時またはかなり一般的な状況の下で損失から身を守るといった程度の意味。
満足すべきリターン……現在の利息・配当利回りをはじめ将来の元本の値上がり益も意味する。